目標達成は簡単そうだからではなく、難しいからこそ追求しよう! 大失敗を恐れない者だけが、偉大な事を成し遂げる。

2015年3月29日日曜日

未遂の英雄、倫理の迷い

ミュンヘンのビアホール「ビュルガーブロイケラー」は満席となっている。もうすぐドイツの独裁者首相、アドルフ・ヒトラーが演説をしに来る。ナチス党の幹部が殆ど揃っている他に、1500人以上の観客が集まっている。エアコンはまだ無かったこの時代でのこのビアホール内の空気が悪い。でも、間もない内にドイツのフューラー(指導者)がここで舞台に乗るから、誰もがこんなことを気にしない。時は1939年11月8日の夕方。緊張が何よりも高まっている・・・




ヒトラーが政権を握ってから6年半が経つ。強硬的な政策は色々とあった中で「人種法」があり、これでユダヤ系の人は純ドイツ系の人とは結婚できなくなった。収容場を設けたが虐殺のニュースはまだ漏れていなかった。自分の故郷オーストリアをドイツに復帰させ、ドイツ人人口の多い西チェコも戦争無しで占領した。アウトバーン(高速道路)を作って、大変な不景気に陥っていたドイツにあった大量失業をほぼ無くした。そしてここから2カ月と一週間前に始めたポーランドに対しての侵略は僅か3週間でお終いになって、宣戦布告をドイツに対して発表したイギリスもフランスも大人しい。彼らは実際になかなか襲って来ない。あと、ソ連とも秘密の協定でポーランドを綺麗に分け合ったし、いやー、文句はない、観客の皆さんに。

ヒトラーがこの晩、飛行機でまた首都ベルリンに戻ることになっていた。しかし、濃厚な霧が掛かってきそうで、予定より早く、21時7分に彼がホールから消えていくことになった。そこで態々はるばる遠くからやって来た観客達は同じくさっさと解散しないで、13分後、21時20分に演壇の裏にある柱に仕掛けられていた爆弾が爆発した。ヒトラーに対しての暗殺、未遂・・・。残っていた150~200人の内7人は死亡し、60人以上は大怪我。

暗殺を企んでいたのが「ゲオルク・エルザー」という人物。より正しい日本語のより詳しい事に関しては、日本のWikipediaをご参照
2003年からのエルザー氏のドイツの記念切手
エルザー氏は最初からナチスを反対していたと言われているが、共産党の戦闘部隊にも属していた歴がある。ドイツ人口の殆どがヒトラーをまだ支持していた中で彼は暗殺の企画を未遂で終え、7人の死亡と数多くの怪我人の責任を負っている。その反面に、もし彼の計画が成功したとすれば、第二次世界大戦は起きなかった。6百万人のユダヤ人が殺されなかった。ドイツは11万平方キロメートルの領土を失わなかった、そして何千万人が戦争の犠牲者にならなかったかもしれない。

こういう人をどう見なせばいい?恥ずかしいからなるべく無視する?英雄として掲げる?それとも殺人犯?「世界大戦を防ぎたかった」と言ったのが暗殺未遂の後だったから。でもそれは単なる弁明?処刑を回避する為の最後の手段、苦肉の策?占い者じゃないから、それから始まろうとする戦争の規模はどこまで伸びるかは彼すら推定できなかったのでは・・・。彼の動機は本当にあれだけ純粋だったんだろうか。

いずれにせよ、ドイツの歴史学者達は戦後エルザー氏に関して徹底的に研究を進めた。その結果によって80年代にはあるドイツの町にエルザー氏の銅像までもできた。記念碑とか記念銘板とか等、色々ある他に、「ゲオルク・エルザー広場」や「ゲオルク・エルザー通り」を設けた町も現れた。

子供が「ゲオルク・エルザーって誰だった?」を訊ねるとどう説明すればいいんだろう。「殺人は絶対、絶対にいけないことだけど、これから戦争を犯そうとする、又はこう思われている人なら殺してもいいよ」と子供に教える訳?倫理的になーによりも難しい問題として思うしかない。「これから世界大戦を犯す人」をどうやって見抜くのか。あとその基準も。世界大戦だけ?隣国の戦略を企んでいる人はどう?殺してもいい?

自分がたまたま好きである外国の軍が襲って来る時に、それに対して自国の正当防衛を仕切っている政治家はどう?か、環境政策、税制、遺産相続、社会保障、少子化問題とかに対して政治家が企てている、自分が絶対気に入らない様な政策草案がある場合、どう?こんな政治家も罰する権利を持つ?これも、自分の勝手で、極端的な行動に至ってもいい様な、例えば暗殺を犯してもいい様な理由になる?だって、ドイツには「激怒市民運動」がある訳だろう?原子力発電所の廃棄物を電車で他所に運ぼうとする時に、ある団体が強硬な措置としてその電車を強烈に止めようする例があるだろう?そこであいつらが電車の線路に自分の身を縛りつけるとか、配線されている架空線をフックで取り壊しているだろう?強力の電気が流れているあの架空線にあんな事をやるのは周り関係者全員に命がけの事。民主主義的に選ばれた議会が決めたのに、あいつらだけは正しいと思い込んでいるから、「秩序」を自分の判断や基準で貫き通そうとする。そんな行動は当然「やってもいい」ってこと?

どこに線を引く?どうやって後の世代にその境目を説明するか。ヒトラーみたいな人を殺してもいいよ~。オサマ・ビン・ラディンも無論いい、というよりも、大歓迎!でもじゃぁ、そんな「殺してもいい」様な人物は誰が決める?首相、大統領、親戚、隣人、友達、先生?しかもどんな基準で?僕だったら子供に説明するのに困ると思う。自信がない・・・、一切ないね。勇気もない。だって子供が僕の話を勝手に解釈したら大変な事態になるかもしれないじゃない。大変、倫理的に実にに大変な問題だ、これは。

来月、2015年4月にはゲオルク・エルザー氏の人生や行動が3回目で映画化する。戦争が終わって70年後の世代は2、3回入れ替わった。耳に大タコができるほど学校でナチスの事が話題になっているのに、若い世代の戦争についての知識は恐ろしいほど薄い。自分の国の最新の歴史もろくに掴んでいないああいう子供達、青年達はゲオルク・エルザー氏が犯した事をどうやって受け止めているのかは心配。判断力はまだ全然出来ていない彼らの頭の中はかなり混乱すると思う。僕の説明が問われないといいなぁと思っている。自信が無さ過ぎ・・・

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4 件のコメント:

  1. 最近のロルちゃんのブログは更新頻度が上がって、しかも取り上げる話題もいいから文句なし。
    ロルちゃんの評論が面白い。

    ロルちゃんもベンジャミン・フルフォードさんみたいに精力的に行動した方がいいですよ。日本で評論家・ジャーナリストになった方がいいと思います!

    https://m.youtube.com/watch?v=NykI5tb_OYE

    https://m.youtube.com/watch?v=JefZeiLp6rE

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  2. ナチスドイツがユダヤ人に行った迫害・虐殺についてですが 「強制収容所のガス室での毒殺はなかった」、「強制収容所のガス室で囚人に噴霧されたのは殺虫剤だった」、さらに、ナチスはユダヤ民族を本気で絶滅させようとしたのではなく、収容所のユダヤ人を(シベリアなどに)追放するつもりだったと考えられるというのが、現代の多くの真面目な歴史研究者たちの結論です。

    " ユダヤ人が600万人殺害された "というのは、イスラエル人やユダヤ系アメリカ人たちによる誇張されたプロパガンダでしょう。 客観的な検証では、最大でも殺されたユダヤ人は200万人以下と推計されています。 勿論、ユダヤ人たちがドイツおよびドイツ占領地から強制収容所に送られ(抵抗した者の多くが殺害され)、多くが収容所で無くなったことは歴史家の誰も疑っていません。

    いずれにしても、ナチスドイツがユダヤ人の人間としての尊厳を否定し大量に殺害したのは事実ですが、多くのポーランド人、ソ連内のスラブ人全般、ロマなどの少数民族や共産主義者たちも同じように迫害を受けて殺された訳であり、ユダヤ人虐殺が全体の一部に過ぎなかった歴史的事実はドイツでは強調されていないのでしょうか?

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  3. ロルちゃんは、難しい課題を突き付けてくる。子供の「ゲオルク・エルザーって誰だった?」という問いには、「信念を貫いて行動し、報いを受けた人だ。」とまでしか説明できないかな。

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  4. 第二次大戦で ”もし歴史が違っていたら” というなら、ヒトラーに関してではなくチャーチルに関する事柄を望みます。

    「バトル・オブ・ブリテン」の後、1940年のフランス占領の直後、ヒトラーは、2度、丁重な和平提案をチャーチルに対して行っています。 ヒトラーは、イギリスと和平協定を結んで西欧の戦いを終了させてソ連との戦争に専念しようと計画していたのです。 フランスに対しても、アルザス・ロレーヌ地方の獲得だけで譲歩する用意があったと考えられます。 ところが、チャーチルは、ヒトラーの和平提案を拒否・黙殺したのです。 死者と破壊を少なくすることを考えるなら、なぜ、このとき、チャーチルが妥協しなかったのかと非常に残念です。

    チャーチルはあくまでも戦争でナチスドイツを倒そうとして、ルーズベルトに頼んでアメリカ(オランダ、中国)とともに日本に対して経済封鎖で日本を戦争に引き込んで、欧州戦争にアメリカを参戦させました。 もし1940年にイギリスとドイツの間で講和が成立していれば、ナチスドイツとスターリンソ連の間だけで戦争が行われ、最終的に共倒れで終わったと思います。 そうなっていれば、西欧での破壊的な戦いは防げたはずですし、アジア太平洋での戦争も起こらないで済みました。 それだけではなく、戦後のスターリン・毛沢東による史上最悪の共産党独裁政権も存在しなかったはずです。

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