「デアー・シュピーゲル」という、ドイツ又はヨーロッパ最有力のマガジンの2013年6月17日版の表紙には、ドイツの(小)学校教育、その中で特に「国語の授業に於ける書法の教え方」を「書法の破局」という風に呼称している。その背景には勿論、色んな理由を考えられるが、民主主義制度の中で簡単に治せない。
ドイツの特徴と同時にその問題は自分の連邦制である。ドイツは16州に分けられており、それぞれの州の自治体的な専門責任分野がある。その中で一番大事なのは、警察や教育である。警察の話は別として、教育は州の管轄に置かれていることで、「連邦文部省」はドイツに存在していないというのが簡単に推察できる。結果的に、連邦政府は全国の学校に対して命令できる範囲は何よりも狭い。州が実際に専門的に支配している分野は他に凄く限られているから、とにかくその担当分野をそれなりに「嫉妬深く」守っている。
それなのに、90年代の終わり頃から始まって、いわゆる「新規書法」が争いながら導入された。そこまであったことのない連帯感で、ドイツ各州、オーストリア、スイス、ベルギー、ルクセンブルグ、リヒテンシュタイン、イタリアの南チロル、つまり、ドイツ語が主に又は部分的に共通語となっている地域の文部大臣達が集まって、ドイツ語の単語のスペルに「抜本的な改革」の意図でかなりの変更を加えようとした。
ただ、政治界のどこでもと同じ様に、参加人数が多ければ多いほど、意見が対立し、なかなか何も決まらない。だけど、一つは決まっている。言葉というのは自然に展開していく物であり、それをドンドン変えるのが、実際にそれを喋っている国民だけで、政治家なんて介入することはないと、ドイツ語圏の多くの人は怒っていた。結果的には納得も行かないし、矛盾も多い。しかも例外が多くて覚えられない。まぁ、その例外を覚える依然に、新規書法に対しての大人の反発もあるから、それを覚えようと多くの人はしない。従って、前の書法で育った(今から見れば25歳以上の人みんな)大人達は今現在新規書法の管轄で育っている子供達の宿題をもう助けられないことになっている。それだけでどんな混乱、喧嘩、迷いが起き得るかが簡単に想像つくだろう。
ところが、新規書法が導入されたのがもう8年ぐらい前なので、今週の「書法の破局」はまた全然別の時弊を描こうとしている。日本人が聞いたら信じられないと思うが、州が教育を担当していると言っても、州の政府は決めるのがあくまでも大雑把に、何年生まで大体何を勉強しなくてはならないという事だけで、教え方自身は学校に任せている。というのは、A学校が「B」氏という教育学者の影響を受けていたら、その何とかの教育学者の教えで授業を進めて行ってもいいことになっている。そして、ここ数十年間には教育学者の中で有名となったのは、あるスイス系の学者であって、多くの学校は彼の教えに従っている。あの人の教説では、1年生や2年生の子供達が「今日習う文字」を自分で決められるだけでなく、ドイツ語の単語のスペルを、少なくても最初の2年間では、自由に決めてもいいことになっている。聞いた通りに書かばいいっていう事なんだって・・・。正しい書き方は3年生から教えればいいことになっている。でも、誰もが想像できる様に、多くの子達はその時にとっくに後の祭り。一旦付いた、悪い癖(正しくないスペル)を治すのに凄い苦労する他ない。
僕はこの記事を読んだ時に思った。ローマ字には26文字しかない(まぁ、ドイツ語はプラス4字)。普通の常識で考えれれば、勉強に熱心である子供達はそれらの26文字を幼稚園にいる内に充分に習得できると思う。でも、ドイツはそれを強制しない。幼稚園にいる内にまだ人格を作ろう、自分の意見を言える様にするのを見習わせよう、子供が(勉強の強制で)不愉快な思いをするのをなるべく避けようというのが、この教え方、この思想を抱えている連中の狙いであるみたい。全てが、全てが、未だに60年代の左派の「非強制的な躾」の後遺症であると思われる。当時のスローガン「好きな様に遊べ」、「好きな様に振舞え」は病的に今の時代に伝わっているというのが非常に痛感の種になっている。
僕は最近また漢検にはまっているから、たまたま知ってるが、日本の子供が一年生で習う漢字の数は80字にも上っている(それは漢検10級に相当する)。二年生では160字(9級)、三年生では200字(8級)、四年生では200字(7級)。書き方自体、書き順、音読み、訓読み、部首、送り仮名、2字、3字、4字熟語も色々と覚えなくてはならない。5年生に上がったら、正式の640字の他に、関連情報をいっぱい、いっぱい身につけなくてはならないのをドイツの同年代の子達のレベルと比べたら、当たり前のように、圧倒的にドイツの負けになる。
ドイツの小学校は4年生で終わる。5年生で中学校みたいな学校に移る。本記事にはああいう中学校の先生達の声も報道されていた:「酷い、殆どの子はろくに書けない、間違いだらけ・・・」と、中学校の先生達が発言している。家族とドイツ語を全然喋っていない外国系の子達だけのせいには出来ない、これは。これは完全に教育制度のせい。そして、教育が州の担当であるというのが憲法に定められているので、絶対変えられない。教え方を任せられている学校が早めに目が覚めて、より昔風のやり方に戻らないと、ああいう可哀想な子供達は就職活動の時に困るだけで終わらない。ドイツ経済は既に嘆いている:「適切な新入社員を見つからない」と言う。従って、エンジニア、専門労働者を外国から招いている作業が既に始まった。でも、ドイツで教育受けた子達はどうするんだ。一生福祉・・・?早急に誰かが急ブレーキを踏まない限り、ドイツの将来は真っ暗と、思う他ない。
なるほど。亡国への道に進むドイツ。そして日本も似たり寄ったりです。国旗掲揚や愛国心に関しては、ドイツの方が上でしょうか?
返信削除あるスイス系の学者を一刻も早くとっ捕まえて、二度と発言できなくするべきではないですか? 亡国の道を歩ませようとする大罪人ですね。
返信削除多分、この学者の弟子たちも大勢いるんでしょう。
どうして子供の親たちは怒りの鉄槌を喰らわせないの?
そんな教育されてて何故黙ってるの?
二度と学者を名乗らせないようにするべきだ!!!
こいつらの仲間はあちこちに繁殖してるんでしょう。勿論、日本にもね。
奴等は一人残らずオランウータンの森にでも幽閉するべきです!!!
それとも、ロルちゃんが漢字のテストでもやらせて、60点以下の奴はみんな
Der Spiegelで公表しちゃうんだ。
そのドイツの学校に子供を通わせています。どうしよう、、、
返信削除NRW週州は他州とくらべて教育水準が低いとも聞いているし、
バイエルンに行ったら学年落とさなきゃならないとかいう話も。
日本の場合だとロルちゃんの言うように覚えることはたくさんあります。
返信削除その結果授業はもっぱら先生が話して生徒は聞くだけになります。
ちょっとおしゃべりな子や規律を乱すようなことをする子は厳しくしかられます。
「その他大勢」として育つ子供は、必要でなければ自分から話そうとしませんし、周囲にあわせることに重きを置くようになるので、主体性もない。善悪の判断ですら他人頼みなんてことも まま (そこそこ頻繁に)あります。
自分の意見を言うなんてもってのほかです。
たとえば、いろんな種類の教育課程で育った人が同じ仕事場で出会えば、それぞれ違うからこそ、ひょっとしたら今現在より生産性が高いこともあるかもと思いますが、 日本ではだめなんです。
一律・平等でなければ、だめなんです。一律にするために、基準から外れた他人は全力でスポイルします。
あと、上のコメントにもありますが、愛国心について。
今はわかりませんが、私が生徒だったころ(十数年前です)の教育では、国歌は歌いませんでしたし、
歴史か社会の授業では「you're the son of a murderer」という意味のことを言われます。今も覚えてるくらい衝撃的でした。
>今はわかりませんが、私が生徒だったころ(十数年前です)の教育では、国歌は歌いませんでしたし、
削除歴史か社会の授業では「you're the son of a murderer」という意味のことを言われます。今も覚えてるくらい衝撃的でした。
それは日教組などの一部の反日・左翼団体によるもので全体的な教育ではありません。あなたの学校にそのような団体の教員がおりその教育をうけたというだけのことです。
以前、長すぎる休暇の回で、コメント致しましたBerufsfachschule通う者です。今回のブログの投稿も私が常々思っていることだったりしましたので、共感できる部分が多いなと思いました。私は、ドイツ語は正直まだまだ下手くそで、ドイツ語が出来ないドイツ人のことを言えませんが、でも、私の周りの人間でいわゆる正しい教科書に載っているような、発音もちゃんとしたHochdeutschでのドイツ語をしゃべる、または使う人間は限られています。大学などに行っているドイツ人、ニーダーザクセンの方々ならHochdeutschなのかもしれませんが、まあ、語学学校で習うようなドイツ語はドイツでは、あまり耳にしません。日本人の私にとっては、アルファベットの組み合わせでできているドイツ語の単語をたくさん覚えることってかなり難しいです。日本語の漢字のように文字を見て想像ができないので。表音文字と表意文字のちがいですから比べられないともいますが。日本人でも漢字が書けない人が多くなっていると思いますが、学校教育では、小学校の頃なんか一日最低100文字漢字帳に学校で習った漢字を書いて反復練習して覚えたものです。
返信削除>幼稚園にいる内にまだ人格を作ろう、自分の意見を言える様にするのを見習わせよう、子供が(勉強の強制で)不愉快な思いをするのをなるべく避けよう
返信削除教育でとかく「人格」とか「個性」とかを一番に掲げる人たちって、
つまるところ”明るくハキハキ自分の意見を言えて(なぜか意見の内容の是非や確証性は問わない。)周りに従順で素直”な子供を”作りたい”だけなんだと思います。
なぜかって?それは、教育者から見て授業が楽だからですよ。いや、本当に楽なんです。勝手に授業が進むから。内容の理解度とは別にね。
それとは別にそういう子が悪いとは全く思いません。社会ではそういう子の方が世渡り上手で無難にうまくいく事の方が多いですから。
でも、大人しくてシャイで自分の意見を言えない子はダメ、かといって和を乱すほど活発な子もダメ。グレちゃった子なんてダメダメ。
「人格」とか「個性」とかいうならそういう子も否定せずに受け入れなさいよって常々思います。
そういう子を受け入れないのに「人格」とか「個性」とかを教育目標に掲げるのってずるいと思います。
それならはじめから「大人達にとって扱いやすい人格」「限られた一部の個性」を伸ばすとでも言えばいいんですよ。
自分の意見を言うのは大事なことです。でも内容のない/的はずれな発言をするくらいなら黙ってれよって思うのも事実。あと自分の発言ばかりで相手の話を聞かない人も多い。(仕事上、個人的にはこれが一番腹が立つ。)
結局ね、「自分の意見を言う」っていうのは、「文章を順序立てて書く」ことと同じように訓練が必要なんです。「人の意見を聞く」のは「文章の内容を理解する」ことと同じようなもんです。そういう訓練をしない/させないで、闇雲に「自分の意見を言うようにしましょう!」でも「筆記は勉強の強制だからよくない!」なんて無責任です。
幼少期なんて特に「覚えること」が「楽しい」時期なのに、もったいない。
ロルちゃん、5Sという言葉を知ってますか?
返信削除日本の会社(中規模以上の会社かもしれない)では、ほとんどの人が知ってると思うんです。ドイツにもこういう言葉はあるのでしょうか?
Seiri(整理)・Seiton(整頓)・Seiketu(清潔)・Seisou(清掃)それに
Shituke(躾け)の事です。
特に、製造業やサービス業では良く用いられています。それに研究所でも。
これが出来ていない会社では、仕事の能率が悪く、不衛生で、事故も起きやすい劣悪な職場環境になってしまうので、特に製造・サービス等の会社では厳しく教育していると思います。ISO14001を取得するような会社では特に厳しいかも。(だって、そんな会社では信頼性の高い製品製造やサービス、研究なんてできないでしょ)
でもこれって、家庭や学校で子供に教育するような事だと思いませんか?
僕は子供の頃に、学校でも家庭でもこういう事を厳しく強制(矯正・教育)されましたよ。
でもね、これが出来ない大人が大勢いるんですよ。こういう連中は、会社では必ず人に迷惑をかけます。その特徴的な病理は、やりっ放しで片付けない!! 自分の行動を客観的に見れない子供と同じですよ。
何が言いたいかというと、子供の頃、ある一定の年齢までは、やっぱり強制してでも子供を教育しなくてはならない事があるということなんです。
正しい事を子供の頃にきちんと教育しておくのは、大人の責任でしょ。
もう、学校が(もしかしたら親も)その責任を放棄して、やりたい放題やっているということでしょう? そんなもん、教育とは言わないよ。
州のそれぞれの学校が、どのような教育をするのかを決定できるというのは、マズイよね。誰が軌道修正するのだろうか?
ドイツの子供達の教育の大方針は、連邦政府が決めなくてはすごく変だと思うんですけどね。(戦後において、それは出来なくなってしまったのかな)
ロルちゃんの記事を読んでると、僕には、子供を使って新しい教育手法を実験しているように思えてなりません。こんなやり方で教育したら子供はどうなるんだろうって、実験してるんじゃないですか?そして、その子供たちが社会人の大半を占めるようになったら国はどうなるんだろうって、実験している。
どうなるかは、ほとんどわかっているけどね。確認しているんだ。
ものすごく悪質な連中だと思う。
yamato
ドイツ人って昔から可笑しな思想に嵌ると、そのまま社会的に大規模に実行しちゃう癖があるよね。ドイツ人以外なら、現実的でないとして一蹴されてしまうけど、ドイツ人は論理的になっとくしちゃうと、現実を無視して皆で突っ込んでいくよね。
返信削除でも、それって日本人も同じかもしれませんね(^^;)ロルちゃんの話は「ゆとり教育」と被る部分が大きいように感じます。
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